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リストマーク ぶどう摘み体験記(les vendanges au Domaine de Viaud)1996 

カテゴリー: ぶどう摘み体験記 | 2006年02月08日 ()
9年前の秋、フランスに向かう機内でつけ始めた日記は4日目で終了してしまいました。原稿用紙にして何枚だったでしょうか・・・。結構な量にはなったと思います。途中で断念したのはぶどう摘みやらフランス人との交流で時間がなかったのだと記憶しています。夜の食事は3時間くらいかけてゆっくり食事をして、もちろんそこのワインを飲む訳ですが、やはりいい気分になって直ぐにベッドに突っ伏してしまうといった具合なのでした。


このブログは新しいものから順番に並んでいます。ですので、ぶどう摘み体験記は、戻りつつ読むような感じになります。一気に表示した方が読みやすいと考えましたので、以下に再録します。






Les vendanges au Domaine de Viaud


昨日から全然寝ていない。時刻は、真夜中の3時。村井先生のレポートはいっこうに終わらない。空港までのリムジンバスが早朝の6時発だから、タイムリミットは多く見積もっても2時間半。でもきっと終わるはずだ。必死にキーボードを叩く。あっ!洗濯をしなきゃ。慌てて、洗濯機を回し、再びパソコンへ。鳥のさえずりが聴こえてきた。もう朝だ。

いかん、大事なことを忘れるとこやった。エッチな本を捨てないかん。もし僕の飛行機が落ちて「ご子息の遺品です。」っていって家族にエロ本が渡されたら僕も成仏しづらいけんね。それはそうと、もう5時10分やんけ。もうレポートはダメだ。用意してもう出ないとフランス行きがぱーになる。

トイレに行き、ふと洗濯物を干していないことに気づく。フランスに持っていくものの用意もあわせてやり始める。このときまだ荷物もつくっていなかったなんて・・・
後輩で、ウルフルズのボーカル、トータス松本に似た高橋君を起こしにいく。彼にバイクで三宮まで送ってもらうのだ。トータスは試験中だし一限から学校があるのに・・すまん、でも起きてくれ。うわー寝起き最悪。機嫌を直すためか、いらないので処分したかったのか、分からないが彼に「萩原コーヒー」の余りをあげた。

いざ出発。タイムリミットまであと20分もない。眠いながらも、ここで事故ったらおしまいだと慎重に運転する。何とかバスに乗り込み一安心。バスの乗り場も2、3日前まで実は知らず、家庭教師先の誠君にちらっと聞いていただけだった。そんなことを湾岸線を軽快に走り抜けるバスの中で考えながら、「ほんとよく乗れたよ。」と心底ほっとした。

未来都市を想わせる湾岸線から関西国際空港の方へ右へ大きくカーブし、海の上の道をバスは凄いスピードで走る。関空につくと、「場違いなところへ来てもーた。」って思いながら辺りをキョロキョロしていた。そのうち自分がサルに見えてきたので、なれてるんだぜってふりして喫茶店に入ろうと思ったが値段の高いこと。徹夜だし金はないしで、朝食は缶コーヒーで済ますことにした。

長いこと待って、ようやくチェックインを終え、ゲートの方へ向う。持ち物チェックのところで、金属反応を調べるところをくぐると「キンコンキンコン」。ブレスレットなどを外したりしても「キンコンキンコン」「キンコンキンコン」「キンコンキンコン」。何回でも鳴った。お兄さんに隅々まで調べられてちょっと参った。「ベルトの下まで手ば入れることなかろーもん。」と思った。股の間もベルトの下も、とにかく全身さわられた。

搭乗(ボーディング)までは時間がだいぶんあったので、ゴールドカードを調子に乗ってちらつかせ(じつはおそるおそる)VISAのラウンジでくつろぐ。みんなスーツでバリッときめているのに、汚い若造が入ってきてラウンジのおねーさん、困ったやろーね。

飛行機に乗り込んでもフランスへ行くという実感が全然わかない。何がこの先起こるんだろうといった不安も期待もなくただ乗っているだけだった。30時間ぐらい寝てないから相当疲れていたんだろうか。離陸するとき、以前感じたような怖さはなく、どうなっても良いと思っていた。まともな状態で飛行機に乗り込んでないので相当に投げ遣りだっだと今にして思う。

機内で隣になった男の子は19才のフリーター。プロヴァンスヘ3カ月あてのない旅に行くそうな。バイトで必死にお金を貯めたらしい。彼のかあちゃん、息子が長旅に出るというのに見送りもせず布団の中から眠そうな声で「いってらっしゃーい」だって。今、隣で寝ているこのフリーター君、鼻ピアスしていて、メガネもすごくオシャレ。白山というブランドでジョンレノンが愛用していたらしい。彼、英語は、全くダメらしい。況やフランス語をやって感じ。どうなるんか想像つきません。ハプニングだらけの旅になることでしょう。がんばってね!

学生にとってはありがたい大韓航空の安いチケットで行くのでソウルの金浦空港で乗り換えだ。フリーター君が韓国製のコカコーラをおごってくれた、韓国までの機内であげた僕のお気に入りの写真のお礼だと言って。缶にはハングル文字が書いてある。同じ味だった気もするし、韓国の香りがするような気もした。考え出すと訳の分からない味になってきた。素直に飲めばいいのに・・・。

このような旅で何がいるかなーと日本で必死に考えてもやはり不十分で、あれ持ってくればとさっそく思った。機内はとても乾燥するのでのど飴があれば助かる。
以前は機内サービスを十二分に楽しもうとはしゃいでいたけど、あれは疲れると悟って今回は食べて寝るだけ。ワインを飲んだりして眠気を増し、日本での疲れもとれるし、時差ボケも軽減されるだろうと、とにかくひたすら寝た。
神戸の港臨む




目が覚めると、二本目の映画の途中。アルパチーノ、渋いねこの人は。「俺も早くあんなおやじになって、ゆくゆくは笠智衆みたいなじじいになりたいなあ」と思ってまた寝る。それにしてもスチュワーデスさんは大変やね。うるさい客が多いし、ジュースや食事の支給に忙しいし、客に食うもん食わせて早く寝かせたいやろうなと余計な心配をした。

ようやくパリの上空だ。空は曇っていてあまり綺麗な鳥瞰図は見ることが出来ない。空港でトイレに行って戻る。あら、フリーター君、どこ行ったのかなぁ?。まあいいかと列に並ぶと、同じ飛行機に乗っていた日本人や韓国人の団体で長蛇の列。入国審査にゆうに30分はかかりそうだった。あーあと思っていると、フランス人が列をすたすたと横切っていく。同じところではらちがあきそうにないので、ついていくと5分もかからずに出ることが出来た。「パスポートを見せてください。」とか「目的はなんですか?」とか「何日滞在するんですか?」とかとかとか、聞かれると思って予習して答えの発音練習までしていたのに、何も聞かない。何もいわない。ちょっとがっかり。

シャルルドゴール空港のなかから、まずはお世話になるシャトーのマダムビエルに電話を入れないかんとテレカを買いに行くが日本円しかないことに気づく。両替をするがその交換率の悪さにはやられましたね。二万円が860フラン、約1万7千円ちょいになってしまった。カードを買う前に、おなかがものすごく空いていたのでカフェに入りサンドウィッチとオレンジジュースを頼んだのだけれど50フラン、千円以上したのでだまされたと思った。関空でもそうだし、空港だから仕方がないよと自分に言い聞かせる。高かったけれどそこの店員の兄ちゃんは丁寧な人で、「ムッシュー」と声をかけられたときは、何かうれしく、また偉くなったような気がした。

カードを買って電話をするがかけることが出来ない。何度やってもフランス語で「番号おかしいよ。」(と多分言っている)そんな声が聞こえてくるだけだった。地球の歩き方でも持ってきていれば問題はなかったのだろうが、なんせガイドは何も持ってきていない。案内所で綺麗なお姉さんに聞くと、16がはじめに要るんだと教えてくれた。さっそく電話をかけ直してみると今度は成功。電話にマダムビエルが出てきた。着いたというと喜んでくれているようだった。リブルンヌ到着時刻を告げ、どう行けばいいかと尋ねると、妹さんが迎えに来てくれる??って言っているのかなあ。よく分からなかったが誰かが来てくれることだけは確からしいので、ホッとした。僕は、とにかく駅の出口で待っていればいいようだ。小さな駅で、出口は1つだけと言っていたし、まあ安心かな。"Au revoir"と言って電話を切り、TGVのチケットを買いに行く。カードを初めて使った。ボルドーの一つ手前の駅まで7000円くらい。安いんじゃないかなあ。

夜



さて、今晩どうしよう。案内所で「ユースホステルの案内をくれ」と言うと、無愛想に「そこにある宿泊案内所に行け」と言われ、「ごもっとも、気づかない私がアホでした。」と思いながら、行くとお姉さんが応対してくれた。本で覚えたばかりのフランス語をパッと放って、次の瞬間「英語で話していいですか?」と聞いてもーた。今考えなくても、アホやなーと思う。200フラン位で、モンパルナス駅の近くという条件で探してもらった。171フランの部屋が見つかり、相部屋でもかまわんかと訊かれるが、もちろんOK。安さには代えられない。

無料送迎バスで地下鉄の駅へ向かうが、どこにあるか分からない。前を歩く二人が地下鉄を探しているらしいので、ついていく。切符を買い、改札で券を通そうとしていると黒人の姉ちゃんが一人はまたいでもう一人はくぐって出ていった。無賃乗車だ。でも「悪いなー」なんて少しも思わず、「足、長かー。俺にはできんばい。」と思った。ディズニーランドにあるような3本の鉄棒がぐるぐる回転するやつで、一番上の棒は腰くらいまであったと思う(あくまでも俺の腰)。くぐるにしても、バックパックを背負っているので別々にせないかんので、どちらにしろ俺には無理だった。

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日本のJRの駅のような明るさは全くなく、薄暗いホームで列車を待つ。すると、色の黒いヤバそーな兄ちゃんが近づいてきたので、ちょっと離れたところで待つことにした。電車がホームに入ってくるときに黒人の優しそうなおばちゃんが、「パリに行くのかい?」と聞いてきたので「いや、こういう駅に行くんです。この電車OK?」と聞くと分からないと言う。「まあいいや、ダメやったら引き返せばいいし」と思って、乗り込む。おばちゃんが人に聞いてくれて、僕を見て頷いているから大丈夫やろう。

あんこ色の合成皮革でできた座席に座っているとリコーダーの音がしてきた。誰かが吹いている。「さすがフランスやなー」と思って聞いているとこれがどうしようもなく下手くそ。でも、外を眺めていると、もの悲しく暗い街角などの風景とマッチして、落ちつくことが出来た。


パリの地下鉄(Metro)検索の素敵な地図




しばらくして、モンパルナスの近くにある駅、DENFERT ROCHEREAU 駅に到着。フランスとかドイツの電車で、降車の際にはボタンを押してドアを開けなくちゃいけないんだということを思い出しながら降りた。みんなが歩いている方へ僕もついていくうちにもう一度券を通すことになる。「あっ、こっちは乗り継ぎか」と思って、”SORTIE”(出口)の目印を頼りに階段を上っていく。でもどうやって出ればいいのか皆目見当がつかずしばし立ち往生。よく見ると開いても良さそうな透明のボードを発見。多分これだろうと思って、押してみるが開かず、敢えなく退散。開かない自動ドアの前に立ったときのような気まずさを感じた。どうしようと眺めているとマドマゼルがかわいい恰好して”ゴン”と乱暴にその透明のボードを開けて出ていった。「あらー」と思いながらあとに続く。階段を上り外へ。さあ、ホテル探しだ。

外は真っ暗、街頭のオレンジの光がやけに鈍く光っている。空に星はないが静かでくらい夜。地図を頼りにあちこち歩き回るがいっこうに分からない。そばにいた若い三人組に声をかけると、「私ダメ、あなたに任すわ。」と女の子は、男にバトンタッチ。そのかっこいいお兄さん、これ難しいよといった感じで少し悩んだあとに「あの通りをまっすぐ行って、右だ」と教えてくれた。「メルシー」っていってどんどん歩いていく。その辺りは人影も少なく寂しいところだった。信号はだいたい無視してさらに進む。道ばたには、ホンダ、カワサキ、ヤマハ等の大型バイクがたくさんとまっていた。さて、行けども行けどもいっこうに見つからない。それもそのはず、実はさっきの兄ちゃん、俺に間違って教えていたのだ。カフェに入ってそうと分かった。あまりに見つからないので通りがかったカフェで道を聞くことにしたのだ。「やっぱ、まずはなんか注文せないかんね。」と思って、軽快に”UNE BIERE, S'IL VOUS PLAIT ”(ビールちょうだい)と言うが、すかさず「どのビールにするの?」と切り返されてしまった。その時、昔初めて吉野屋に行ったとき「牛丼ください。」って言って恥かいたことを思い出した。今は、ちゃんと「並ちょうだい」って言えるけどね。とりあえず、「どれが美味しいの?」何て聞く余裕は僕には全くなく、予想外の反応にどぎまぎしながら、「い、い、一番右のやつ」と頼んだ。15フラン。そんなに高くはないね(1フランは約20円)。マスターにホテルの場所を尋ねていると、酔っぱらって上機嫌のおっさんと、30くらいの人の良さそうな男の人が寄ってきて、熱心に教え始めてくれた。赤い顔したおやじは「簡単だ!右、左、右だ。」と言ってるが、ちょっとホモが入っているような男の人は、酔っぱらいのおっさんは困るよねーって顔しながら丁寧に教えてくれた。だいたいしか分からなかったけれど、「ウィ、ウィ」と言いながら聞く。お礼に、僕の撮ったお気に入りの写真をプレゼントしカフェをあとにした。


Dogs in France



ペンで書き加えてもらった地図を片手に石造りの暗い街なかを探し回るがどれだけ歩いても見つからない。同じところをぐるぐる回ったりするが全然見つからない。一時間は優に歩き続けている。ここら辺だろうと思うが、全く見つからない。たまりかねて、パジャマ姿で電話をしていたお姉さんに聞いてみた。「ずっとまっすぐ行くの」、と言われた気がしたのでとにかく歩き続けた。するとホテルのあるCABANIS 通りを見つけるが、分からない。どこなんだホテルは?外で寝てもいいやと最初は思っていたけどパリの夜はこの時期結構寒いやん。必死で探す。なかなか見つからない。もうしばらく辺りをうろうろした後、バイクに乗った兄ちゃんに聞くと「そこだよ」と教えてくれ、やっと、やーっと到着。

フロントの人は抜群に英語がうまかった。部屋にはシャワーがあり朝食もついているらしい、それで四千円しないのだからまあまあだ。ルームメイトはどんな人かな?「女の子やったらバリ嬉しかー。」そんなことばっか考えながらノックして部屋に入るが、真っ暗。誰もいない。フロントに電話して聞くと、12時までに予約がなければ僕一人とのこと。ラッキーだ。シャワーを浴び、洗濯をして、お金の精算。そして日記を書き始めるが眠くなって途中でダウン。

エッフェル塔



目が覚めると六時過ぎ。外では雨のような音がする。あーあ、やっぱり。最悪。傘は、持ってないし、この時間まだ店は開いていないよなあ。時間がないので今回もバタバタ片付けを始め、写真を数枚撮る。バックパックを持ち、チェックアウトする状態で朝食へと向かう。食堂にはまだ一人しかいなかった。バイキング方式だったので、フルーツとジュース、フランスパンにクロワッサン、そしてコーヒーを取った。フルーツは6フランいると言われ10フラン出すが、レジに釣り銭が少しもなく、「後で」と言われる。「フランス人は昔イスラムを撃退したとき『やったぜ』と思いながらイスラムの象徴、月の形をしたクロワッサンを食べたんやね。」と思いながら食べていると向こうの席に座ったハゲたおっさんが僕の方を見てなにかしゃべってきた。何を言っているのかは見当つくはずもなかったが、「~だろ?」と言っているのは分かったので「ウィ」と答えておいた。まあ、むすっとしてもあれだから笑顔を見せると、「おまえは満面笑みだ。幸せが顔にあふれでてるぞ。」とニヤニヤしながら言っている。「余計なお世話じゃ。」と思ってると、彼の側で食べている日本の女性らしき人に「ほら、彼を見て見ろ。幸せそうだろ?」何て言っている。「ええ加減にせんかい、おっさん!」席が5メートルくらい離れていて、言われっ放しもなんだから彼の前に座ることにした。彼はやけに嬉しそうにするので、つられて僕も嬉しくなってしまった。このおっさん「ホームアローン」とかに出てドジな役ばかりするハゲのおっさんに似ていて、愛嬌のある顔をしている。彼はシリアからのエンジニアで、仕事だそうだ。以前は日産ディーゼルに勤めていて日本人の友達もいたらしい。そんな彼は、なんにでもけちつけるのが好きなのか、ドイツ人は仕事バカだとか、フランスはお金がかかるとか、俺の顔にしろとにかくなんでも言いたい放題。時間もあまりなくなってきたので、モンパルナスまでどのくらいかかるか聞くと地下鉄ですぐだと教えてくれた。歩いていこうと思ってると伝えると「いや、地下鉄がいいんだ」と言って行き方を教えてくれた。モンパルナスへついたのは8時過ぎ、TGVは8時15分発だったから、歩いていたらきっと間に合わなかった。

雨の降るなか傘もないままホテルを出て地下鉄の駅へ向かう。8フランで券を買う。ホームに電車が入ってきた。車内はすごい人。日本の朝のラッシュと変わらない。フランス人がパリで生活する人をパリ人と言って区別するのが分かる気がした。おろ、前に立ってるお姉さん、めちゃめちゃ綺麗じゃありませんか。しばし目を奪われていると、騒がしい声がしてきた。おばちゃん達、朝から元気やねー。よー喋るわ。

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モンパルナスに着くが、でかくてTGVの乗り場が分からない。自分でゆっくり探す時間はもうなかったので、近くにいたビジネスマンに聞く。「2階へ・・・」とか言っている。ここで2階と思ったらシロートやね、これは日本でいう三階のことや、勉強しとってよかったーと松蔭での集中講義の成果を実感しながら上っていった。(集中講義の成果はそんなもんかー!?)駅の売店で葉書を20枚買い車内へ。駅はターミナルになっていて、福岡の西鉄福岡駅とか阪急の梅田みたいな駅だ。でも鉄骨むき出しで暗い駅。

発車したのがいつなのか分からないくらい静かだ。新幹線と比べると照明が違うなと思った。新幹線(グリーン車は知らない)は、全体が明るくなる照明だが、TGVでは局部的に明るく、窓の上に照明がついていて読み書きがとてもしやすい。窓の外には田園風景がずっと広がっている。フランスは農業国だなとまたしても思った。シャルルドゴールの上空でもそう感じたし、車窓を横切っていく景色を見てもそうだ。外は、パリからずっと雨。思わず♪窓の外は雨~雨が降ってるー♪(イルカ)と口ずさんでしまった。窓についていた滴も、列車のすごい速さで吹き飛ばされる。ぼーっと外を眺めていると、牛が牧草地でゆったりと草を食べている。のどかやねえ。僕は都会はあまり好きじゃないから、こういう静かなところでの生活にあこがれる。

さっき通っていった女の人が戻ってきた。香水をぷんぷんさせながら。化粧直しをしたんやね。駅も近いし、誰か大切な人に会うんやろうね。

さあ、どんな一日が始まるのでしょう。ブドウ畑が見えてきたけど、肝心のブドウがついているかまでは分からない。もう摘み取られたんかなあ?と少し心配になる。TGV セピア



パリの地下鉄を非常に楽に検索するサービスが登場していましたので、ご紹介します。

Plan Métro



上記サービスを紹介したエントリーはこちら



いよいよリブルンヌ(LIBOURNE)に到着です。リラックスした状態で停車するのを待っていたかというと、違うんだよなこれがまた。到着の直前にお手洗いに行っていて、手を洗っていると列車が止まり始めた。「ちょ、ちょっと待ってくれー!」またまた慌てて荷物をまとめ電車から降りた。何でこうせわしないかなあ?いつもいつも。

地下通路を通って出口へ向かう。マダムの言ったとおり出口は一つ。でも駅で僕を待っているような人は見あたらない。外へ出てみてもそういう人は見えない。もしかしてホームかなと、戻って見渡すが人を探しているのは僕くらい。1分も立っていないのにものすごく長く感じるねぇ。溜息をついて出口の方を見るとパーマのかかった髪をした背の高い女の人が入ってきて僕と目があった。瞬時にこの人だとお互い判った。僕の名前らしき言葉を言っている。間違いない。「ボンジュール!」と言って挨拶。マダムビエルの姉妹だそうだ。お姉さんなのか妹さんなのかは分からない。
欧米では、兄弟間の年齢差なんてあまり気にならないのかなあ?兄、弟を指す言葉はないのだから。序列をついつい気にしてしまうのは日本人だからでしょうか?

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このアネットさん、車で迎えに来てくれていた。荷物を後部の座席におけるように2ドアのOPEL の右ドアを開けてくれ、座席を倒してくれた。「Merci !」と言いながら荷物を置き、車の左に回ろうとすると止められた。見ると左にハンドルが・・・「そーか、これは外車だ」等とアホなことを考え、今更ながら納得。もちろん車は、右側通行。分かっちゃいるけど、こわいし、気持ち悪いしで、「頼むから左を走ってくれー」と内心本気で思った。


車のなかで彼女、アネットがリセー(高校)でスペイン語の教師をしていることや、ブドウ摘みのこと、今年のブドウの出来等をはなしてくれた。アネットは英語が話せないから「スペイン語を使いたいわ。」とかぼやいてる。そう言われましてもねえ。セニョリータ、セビリア、バルセロナくらいしか知らんけんねー。

途中でスーパーに寄る。マダムビエルがいるかもしれないかららしい。荷物を分けて載せるみたいだ。車を駐車し、スーパーのなかへ。マダムらしき人がお金を払っているみたいだ。「ボンジュール!」あー良かった。すごく優しそうな人だ。電話の声から想像していた以上に優しい感じがする。何てすてきな笑顔をしてるんだろう。僕は完全に安心しきってしまった。堅苦しい挨拶もなく、「久しぶりだわね」といった感じだった。それにしてもすごい買い物の量だ。そういえば、アネットが「学生がたくさん来ているから彼らとなら英語で話せるわよ。」と教えてくれたのを思い出した。いや、それでもすごい。どでかいカート2台分。うわー甘いお菓子類もたくさん。こんなん毎日食べよったら、絶対太るぞ。心配せんでも食べなきゃ良いんだけどね。荷物を二人の車に分けて、僕はアネットの車で家へ。ブドウ畑の間をかなりのスピードで駆け抜け、到着。
Domaine de Viaud 外観

すごいところに来てしまったのではないか?とまず思った。ツタに覆われた大きな家。中ではおばさん二人が料理をしている。優しそうなおばあちゃんと肝っ玉かあさん風のおばはん。その肝っ玉かあさん、イヴリンヌといって実はもうおばあちゃんで孫がいる。「ここはフランスよ。しっかりフランス語を喋りなさい!」確かにそう言っていた。ほとんどみんな英語が話せない。何て素晴らしいところに迷い込んでしまったんだー。とりあえず、僕は挨拶くらいしかできんぞ。複合過去も進行を表す表現も全部忘れてしまった。まあいいや。
ジャニンヌ、イブリンヌ



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「部屋は、階段を上って右、右。足下に気をつけるのよ!」階段を上ると真っ暗。そろーと足を伸ばすとかなりの段差。忠告を正しく聞き取れたことに満足。うわー、大きなベット。僕のためにこの部屋が用意されているんだと思うと無性に嬉しく、顔の筋肉がゆるんでしまった。だって、今まで僕らはなんの関係もない赤の他人ですよ。一度もあったことのない日本人を快く受け入れてくれるなんて。しかも、僕は一年でもっとも忙しく大変な時期にこちらにお世話になるんですねえ。
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このフランスの旅がどのように決まったかということを思い出してみる。あれは、確か6月だったと思う、いつものように僕の部屋でコーヒーなどを飲んでいるとき、寮の先輩で世界各地を旅した中島さんが、アルバイトをしながら世界を旅する人たちのことを話してくれた。その時、ぶどう摘みをする人たちの話が出て、それはいいと思って、「それやりますよ。」と僕。あまりにも突飛だった。その後、フランス語の先生であるシャリエ先生に「フランスにブドウ摘みのバイトに行きたいのですが」と相談すると、「それは良いわね。フランスの友達に聞いてみるわ。」だって。なんでもないような会話だけどよくよく考えてみると不思議でしょう。ふつうこんな簡単に行くはずないやん。フランス人は誰でもシャトーの人と知り合いなんてことはあり得ないもんねえ。とにかく偶然が重なっていた。この夏は一気に幸運が転がり込んできた。

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とりあえず、ブドウ農園の人にはバイトをしたい日本人学生の話はいっているようだが、ビザの問題や、フランス政府の規制などにより正式に雇うのは難しいらしい。フランス行きも雲行きが怪しくなってきた。シャリエ先生がフランスへ一時帰国する一週間前くらいに、バイトは別にして、シャトーの人は受け入れてくれるということを聞いた。でも、別にフランス行きが決まったわけではない。先生から、マダムビエルの住所と電話番号を教えてもらった。あとは、僕が自分で交渉しなさいとのこと。先生は7月17日くらいに帰国されているからもういないし、さあどうなるのやら。

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少し暇が出来たので、岐阜のおばあちゃんの家へ遊びに行った。というより、松蔭女子大であるフランス語の集中講義に向けての準備をしにいったのだ。そこで、シャトーへ行きたいという気持ちと、いつがブドウ摘みの時期かという質問を書いてマダムビエルに手紙を送った。


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神戸大学国維寮の廊下


およそ2週間後、すでにフランス語の集中講義は始まっていて、僕の先生であるマダムペルツにもブドウ摘みのバイトに行くんだと言ってしまった。だけど、2週間以上経っても返事は来ない。これ以上待ったら、手遅れになる。「ここでなんとかせないかんばい。」と腹をくくり、フランスへ電話することにした。フランス語で電話などしたことがないし、集中講義に出ているからといってすぐ話せるようになるはずがないやん。そこで、ペルツ先生や助手をしてくださっているマリー・クレール先生に表現を教えていただき、アドバイスをもらう。

準備だけは整った。あとは気合いだけだぜ。とはいってもやはり心細い。フランス語をやってた先輩の瀬戸口さんと門先輩、そして門さんの彼女でフランスに一年ほど行ってらした大江さんを部屋によんで、もしもの時は助けてもらうことにした。ウオー、緊張するぜ。勢いで行ってしまえと思い、小網中さんで買った日本酒「壜澗急冷」を二杯ぐいぐいと飲んだ。ういーとなった状態でさあ電話だ。


モンマルトル



交換手を通して国際電話をかける。「相手の方は、留守番電話でした。」とのこと。「じゃあ、またあとでお願いします。」といって電話を切るが、留守伝なら緊張もしないしとりあえず言いたいことだけ言っておこうと思って、「ゼロゼロよいこ」(0041)を利用して再度かけることにした。「プルルルルル、プルルルルル、ガチャ。ボンジュール。」「ん?」「ボンジュール」「んー?!!!!」留守伝じゃないやんかー。あん時は本当に焦った。「ボボボボ、ボンジュール。」「もしもしタカダ・コウゾウといいます。シャリエ先生の学生です。手紙を送ったのですが、届きましたか?」などと、ノートに書かれているフレーズを読み上げた。

マダムビエル、手紙は受け取ったが、いつ頃がブドウ摘みに最適か分からなかったので、返事が出せなかったという。行っても良いかと聞くとオーケーをくれた。一安心だ。またお電話しますと言って、電話を切った。遠い遠いフランスのしかも知らない人に電話して話が分かってもらえたので本当に嬉しかった。昔、初めて英語で電話をかけたときのことなどを思い出した。今回は、話の途中で用意していたフランス語が尽きてしまった。「僕の話せるフランス語はこれだけです。」とフランス語で言うとマダムは笑っていた。僕が用意していたノートを必死に読んでいたのがバレたのだろう。


出発の朝

出発の朝

二度目の電話の時、どれくらいの期間泊めてもらえるかということを聞いた。すぐに返事は難しいだろうから、「家族と相談してください、また掛けますので。」というと、「ここのことは私が何でも決めるから、大丈夫。あなたはどれくらい泊まりたいの?」と逆に聞き返された。実は、彼女は独身でシャトーの一番偉い人だったのだ。あまり長くても迷惑かもしれないと思って、一週間お願いした。

飛行機のチケットを9万円位で買ったあと、僕の日程をフランスへ送った。でも決まっているのは、9月19日にシャトーへ行くことだけで、それ以後のことは全く未定だった。その後、試験期間となりレポートなどに追われているといつのまにか出発の朝を寝ずに迎えたというわけだ。


寝室に昨日ホテルで手洗いした生乾きの下着などをハンガーに干し、木でできたあたたかみのある階段をもちろん靴のままゆっくり降りていく。何があるかなと周りを見る余裕はなく、覚え立てのフランス語で「何かできることはありませんか?」と聞くと、イヴリンヌが外を指して何か言っている。そうか、車から買った荷物を運ばなきゃと思い、外へ出るとマダムは真っ赤な顔をしたおじいさんと話をしていて、僕を彼に紹介してくれた。うわー昼間から飲んどーばい。あまりにも典型的なフランス人のワインのみに会った気がしてすごくおかしく、また妙に嬉しかった。「このおっちゃんの、血はワインやなー」ちゅうくらいぷんぷんしていた。「ボンジュール」握手をする。手が大きく皮のなんと厚いこと!このムッシューカローにも僕はなつかしさを感じた。この人はかなり昔からこのシャトーで働いてるそうだ。M.カローともう一人の酔っぱらいじいちゃん(酔っていないという状態がないような人をこう呼べるのかは分からないが・・)に連れられるままにブドウ摘みの場所へ行く。
ムッシューカロー



15、6人の人たちがブドウを摘んでいた。会う人会う人にBONJOUR !と挨拶をし、おじさん連中と握手をする。M.カローが僕を連れて実際にブドウ摘みを見せてくれた。ブドウといえば藤棚のような情景を想い描いていたのだけれど、胸の辺りまである垣根みたいになっている。腰をかがめながらブドウを摘んでいくから、慣れないと腰が痛くなる。ブドウには、カビの生えたものもあり、そういうのは払いのける。M.カローは淡々と摘んでいる。利き手にはさみを持ち、反対の手でブドウを下から支えてる。パチンと切ってかごに入れていくのだ。カローさん、ほとんど喋らないが、何か話をして場を持たせないとなんて感じには全くならない。いると安心する人なんだなあ、M.カローは。

M.カローにブドウ摘みのポイントを教えてもらった後、あそこで何をしたのかは全く忘れてしまった。すべてが新しく珍しくしかも一度にどっと来たので前後関係など分からない。「ああなって、こう言われ、ああした。」といった仕方でなんてとても思い出せない。
ぶどうを摘む



すぐに食事の時間になった。扉をくぐるとひろーい空間が広がっていた。テニスコートの一面を少し縦長にしたくらいの広さがある(→嘘。大袈裟。)。壁には、画家のような人の写真や絵などが飾ってある。石の床に暖かな木の屋根。美術館のようなところだ。ここで食事をするんだな、長いテーブルに30くらいの椅子が並べてある。僕は、一番偉そうなところに座るらしい。ジャニンヌというみんなの料理をつくっているおばあちゃんがそう教えてくれた。

もしかしたら食事の前に何か言わないかんのかと思い、部屋に勢い良く駆け上がり、慌てて自己紹介の言葉などをチェック。でも何もなかった。若い学生たちはみんながそろっていないのに食べ始めているし。なーんだ、心配して損した。
ダイニング



僕の席のちょうど反対側、7、8メートルくらい離れたところからセバスチャンという南仏からバイトにきた大学4年生の兄ちゃんがこっちに来いと呼んでいる。僕がブドウ畑に忘れてきた皮ジャンをもって帰ってきてくれていた。お客さん用の席に座らされて困っていた僕を知ってか知らずか英語で「今日はチーフと、明日からは俺達とステイすればいいからな。」と言ってくれた。ああ、明日からは一緒に食べようってことやね。
ダイニング2



ワインが10本くらい当たり前のようにテーブルに並べてある。白も赤もいただいた。ボトルには、ラベルが付いておらず、ここでワインがつくられているんだとという実感を新たにした。「ここのワインですか?」とマダムに聞くと赤ワインがここのもので、白ワインはボルドーの同業者のものだという。ここの赤ワインとボルドーの白ワインを交換しているらしかった。白はとても甘くて美味しく、何杯でも飲めそうだ。一方、1993年のものだというここの赤ワイン、おいしかー!いや、マジでこれうまいばい。これまで飲んできたワインの中でダントツに美味しかった。渋いな、酸味が強いな、などとは少しも思わなかった。特徴がないという意味ではない。すべてが調和しているようで、なんて飲みやすく味わい豊かなんだろうと素直に感じた。


だから食後はこんな感じになる・・・、人もいる・・・。
食後のオクターブ



お料理には、まず田舎風スープが出てきた。ニンジンやジャガイモなどいろんな野菜が入っていてすごく美味しい。そして、真っ赤なトマトを刻んだ上に鮮やかな緑のネギ。ヘー、フランスでもネギを食べるんやねと思ったが、よーく見るとピーマンを細かく刻んで上からかけている。赤と緑がすごく綺麗だった。文章にしているからといって誇張して書いているわけではなく、本当に鮮やかな赤と緑だった。こちらのマーケットに行くと「着色したやろ?」と言いたくなるほど鮮やかな色の野菜が並べてあるのだ。

グリーンピースを炊いたものの後に、グリルド・チキンが出てきた。そのとき、料理をつくっている(キュイズィニエの)ジャニンヌがジョークでみんなを笑わせた。マダムが必死に説明してくれるがいっこうに分からない。でも、みんなにつられて僕も笑っていた。「分かりませんけど、楽しいってことは分かります。」と言っておいた。

ぶどう摘みの季節は実りの季節。暑いなか汗を流した後の食事はうまい。ましてや
そこで出来たワインとはトレボン・マリアージュに決まってる?!
花



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マダムはお父さんが亡くなったあと、MAISON MARIUS BIELLE というこのシャトーを守っているらしい。神戸大学国維寮の寮祭以来お世話になっているワイン屋さんに「Maison がつくならかなり規模の大きい所じゃないかな。」と言われたことを伝えると、父親の名を守るためにシャトーの名をMAISON MARIUS BIELLE にしているのだという。このとき初めて、名刺に書いてあった”MAISON MARIUS BIELLE ”の意味が分かった。要するに”お父さんの家”ってことだね。

マダムと話をしている内に彼女はここで一番偉い人なんだということが分かり、日本から電話したときに感じた不思議にも合点が行った。前にも書いたが、僕の滞在期間など話し合わなくて良いのですかと聞いたとき、「良いのよ、私がここのことは全部決めるから。」などといわれ家族構成などどうなっているのか分からなくなり、お土産のことも含めてちょっと困っていたのだ。

マダムには、母親とお姉さんが二人いる。結婚はしていないようで、ここのことはすべて彼女の一存で決まる。姉のアネットは、高校の先生で一番上のお姉さんはパリで暮らしているらしいので、マダム一人でこのシャトーを切り盛りしなければならない。それを考えただけでも大変なのに、日本からの学生まで今回受け入れてくれたのだ。何とか恩に報いたい気持ちに当然なる。


二種類のアイスクリームにマドレーヌという、日本だったら僕がこれだけで昼をもたせるくらいのボリュームのデザート。それを食べた後、ぶどう摘み再会までの少しのひとときをみんな思い思いに過ごす。でも人気ナンバーワンは昼寝かな。気持ちのよいボルドーの風に吹かれて木陰で涼むのだ。

お昼ねカロー


みんなは畑へぶどう摘みへ行き、僕はマダムと車で出掛ける。「あなたは疲れているし、働かなくて良いのよ。日本は今何時なの?夜の9時か10時?」「眠たかったら、上で寝なさい。」などと心配してもらったが、初日で精神が高揚しているせいか全く疲れは感じてなかったので、「大丈夫です。トレビヤン。」と言いながらついていった。

ブドウ畑の間を抜け、TGVの線路の上の橋を通ってマダムのおかあさんの家に鍋などを取りに行き、倉庫に行っては皿などを車へ運ぶ。

駆け抜け2


その後、葡萄酒を作る過程で必要な機械を買いに二軒の店へ足を運ぶが、どちらでも無いと言われ、マダムがっくり。二軒目の店を後にし、今度はリブルンヌの街の中心へと向かう。僕の足下においてある、できたてのワインの成分分析に行くのだ。コルクで栓をされたボトルの口の隙間からプチプチと小さな気泡が出てきている。まだ発行が活発なのだ。今年のワインの出来が良かったら良いなと祈るばかりである。日本にいるときに、今年は日照時間が少なく天気もあまり良くなかったことを聞いていたので心配していた。ツール・ド・フランスの時に降雪でレースができなかったと聞いたような覚えもあった。でも、9月上旬にはかなり良い天気が続いたそうで、少し安心。


parisvoiture



目的地のそばに到着するが、駐車する場所が見あたらない。僕も周りを見回してスペースを探すが見つからない。どうするのかなあと思ってみていると、「もうっ」とか言いながらマダムは2台の車が出られない形で大胆にも駐車してしまった。あらあらと思いながら僕はマダムにニヤッ。マダムもニッコリ。それにしても、フランス人の駐車の仕方はすごい。どうやって出るの?と言いたくなるほどの詰めようだ。前後にガンガンとピストン運動してから出るんやなとも本気で考えたくなるよ。僕は見たことがないけれど実際にやってるんだろうね、どうしようもなかったら・・・

この検査所で今年のワインの出来を見てもらうようだ。「アポロ13」で総司令官を演じている役者に似ている、背が高く髪はスポーツ刈りですっきりの白衣のお兄さんに検査をお願いし、消毒液を車に積んでみんなが働いている畑へと向かう。


マダムには働かなくて良いと言われていたが、みんなが頑張っているところを見ているとやっぱりやりたくなるっちゅーもんでしょ。働きたい、とお願いすると。「あらあら、頑張るのね。」といった感じで僕にはさみを貸してくれた。優しい笑顔でね。いやー、ホントマダムの笑顔を見てると心が安まるんよ。

ぶどう摘み


パニエという摘み取ったブドウを入れるかごを受け取り、みんなに混じって僕も仕事を始めた。このときは、ブドウ摘みの方にはあまり注意はいかずアルバイトに来ている学生との会話で精一杯だった。マテューやセバスチャンは、とても愛想が良く、優しかった。マテューはフランス北部から来た大学生で英語がとても上手だ。話をするのが楽だなあと思ってみるといつも英語を使ってしまっている自分に気付く。ある国に行ったら、その国の言葉を話そうと思っていたが、残念ながら僕のフランス語はまだまだだし、下手に向こうが理解してくれるもんだからついつい英語を使ってしまった。でも、英語圏ではない国に行って無造作に英語を喋り散らすのは失礼だと分かっているので、可能な限りフランス語で頑張った。

ぶどう摘み

ぶどう狩り


「日本人は犬を食べるの?」とマテューから聞かれ最初は意味が分からなかったのだが、とんでもないことを聞かれていることが分かり慌てて否定した。彼の質問は、僕が日本に来た外国人に以前聞いていたようなことばかりでやけにおかしく自分を見ているようで少し恥ずかしかった。いつも、日本といったらこれだといった典型的な答えを期待しているかのようだった。ボンザイ、ハラギリ、ヤクザ、ジャパニーズ・ガーデン、ジュウドウ、カラテ、などが彼らの口から出てきた言葉で、僕には縁遠いものばかりだった。でも、多くの日本人が外国の人に「日本の文化」のことについて話しをする時はあんなことや、寿司、相撲、てんぷらとかを挙げるのかなと思うと妙におかしく、実感とはほど遠いし、僕の生活とは関係の無いものばかりだと確認するばかりだった。だから、「彼らが日本について知っていることは現代の日本人すべてが共有するものではないし、所変われば、そりゃ食べ物、着るものも違うし考え方も違うのは当たり前やん。でも、楽しかったら笑うし、辛かったら涙も出る。まあ、死ぬまで生きるっていうのは同じやん。」というようなことを考えていたが説明しようにも、うまく言えないし、伝わりそうもなかったので、とりあえず笑った。その後は、自分たちが国の文化を代表するのは「違うな。」ってお互い感じとったのかお姉ちゃんの話やアホなことばかり言い合っていた。

マテューは、インターネット上に電子メールのアドレスを持っているらしく。今度から連絡を取り合おうということになった。フランスに良き友ができたことが本当に嬉しく、日本に帰ってからの楽しみも増えた。

ぶどう


背中あわせ



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ブドウ摘みは、思っていたよりずっと楽しく、みんな歌を歌ったり、世間話をしたり、ブドウを「ボン(おいしい)」と言って食べたりしながらやっている。カビのついたブドウは捨て、色が薄いのも良くないので捨てるようだ。美味しそうにみんな食べるので、僕も食べてみた。すごく甘くて美味しい!実は、僕、ワインをつくるためのブドウってさぞ苦いんだろうなって思っていたが大ハズレ。すごく甘かった。何でこんなに甘いものが、ワインの味になるのか不思議に思った。(日記を書いた当時、ホント何も知らなかったのね)

仕事も終わりに近づいた頃、一人のおばちゃんがきつい調子で何か言い始めた。そのうちにすごい剣幕になってきて最後の方はすさまじかった。僕は、喧嘩とかは世界のどこでもあるよねって思っているから別に動揺もせず、ただ「あちゃー。」と思っていた。僕にとってはまさに「あらら」とか「まあまあ」といった感じだった。周りの人もいたって冷静。喧嘩している人らも近づいていって取っ組み合いをする様子はなく、誰も言い合いを止めるそぶりさえしない。怒っているということは火を見るよりも明らかなんだけど、僕には彼女が何をいってるかなんてこれっぽちも分からない。そのギャップが頭の中で妙な感覚を呼び起こす。

言いたいことは言い終わったらしく彼女は帰っていった。背が高くパーマのかかった金髪のマテューが言うには、さっきのは二家族間での意見の対立らしいが、それ以上のことは分からなかった。

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MAISON (家)へ車で戻る。僕は、マダムの車で来たので帰りはM.カローに乗せてもらった。車の中では、マテューとダヴィドそしてM.カローがさっきの喧嘩についていろいろはなしている。

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メゾンで、イヴリンヌ(僕らに料理をつくってくれる人)に「何を飲む?」と聞かれ、一番良く知ってる「水」という単語を言ってしまい後で後悔した。フランスでは、今考えると水道の水をがぶがぶ飲んでいた。さすがにパリでは飲まなかったけど他の所では飲んでも大丈夫。(2005年現在の事情は知らない・・・)

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M.カローとマダムがさっきの喧嘩について話をしている。M.カローが当事者かどうかは知らないが「はっはっは、こんなこともたまにはあるよ。」という感じだった。このじいちゃんがいたら大丈夫だなそう思わせるに足る心の大きさそしてゆとりを持っている。どう考えても悪い人には見えない。またしても僕は「早くじじいになりたい。」と思うばかりだった。
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僕らは、フランスパンなどを二人の横で食べていた。「僕ら」というのは僕とフランス北部からの学生マテューとダヴィドである。他の学生は、もう車で帰ってしまった。ほとんどの人が車で毎朝シャトーに仕事をしに来ているみたいだ。マテューとダヴィドそして僕が、マダムとこのシャトーで寝泊まりするようだ。

僕がパテを食べていると、マテューがこのパテ美味しい?と聞いてきた。彼は全然手を付けない。「うん、美味しいやんか。」と答えるとうぇーって顔して言ってきた。「それ、血でできてるんだよ。」だって。急に気分が悪くなってきた僕だった。聞かなかったら美味しいままのパテだったのに・・・。

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M.カローが帰ってしばらくしてマダムと学生の僕ら三人は彼女の運転する車に揺られ、他の人のブドウ畑に行った。車を止め、マダムは言う。「耳を澄ましてごらん。何か聞こえる?・・・・・残念だけど、もう遅いみたいね。」ブドウ摘み取り機を僕らに見せようと思って連れてきてくれたのだけれど、今日はもう遅かった。2カ所回ったが結局ダメだった。確か7:40をまわっていたと思う。でも辺りはまだ明るい。車の窓の隙間から入ってくる風がちょっぴり冷たく、辺りは静けさをどんどん増していく。

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家へ戻ると「まだ夕食は、いいでしょ?」と言ってどこかに行った。多分ワインづくりに行ったのだろう。マテューとダヴィドに岐阜で買った竹とんぼをあげたらやけに喜んでくれて、嬉しそうに遊んでいる。マテューがなかなか出来なかったので見本を見せようとおもいっきりやったら「あいたー」羽根が親指に当たって内出血してしまった。ちょー、何でこげんことになるかねえと、悲しかないけど痛さで涙がにじみでてきた。

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その後、二人の寝室で、得意のマジックを見せた。これが、大成功なんよ、奥さん。めちゃくちゃびびってる。「どこにかくしたの?」だの「このトランプ嘘もんやろ。」とか言って必死にタネを探している。こんなにうまく行くとは思わなかった。「へーすごいね。」で終わらず、やたらと嬉しがって驚くので予想外にこっちも楽しかった。20才のダヴィドはギターがプロ並みにうまい。家の周りに友達がいないから毎日6時間は練習してるのだそうだ。相当田舎に住んでいるらしい。

三人で音楽の話をしていると「御飯の用意が出来たわよー。」と下からマダムの声がした。マテューが「行きまーす」、と答え降りていく。昼とはうってかわって4人で食事だ。ケンカのことに関係してだろうが、話題は女性の社会進出の状況。日本の現状について聞かれた。フランスはどんどん進んでいるらしい。僕としては、僕が男という性を持っていることとは関係なく今の女性の社会進出に関するあれこれの議論に首を傾げはしても興味はない。もちろん社会に出たいと思っている女性を応援する気持ちは人一倍あるし、それに対する障害は、無くなった方がいいに決まっている。だけど、社会進出が良いことなのか、僕にはこれが分からない。自らをフェミニストと呼んではばかることのない人達には「どこで女性の総意を取ってきたんだよ?」とたまに言いたくなることがある。社会的に力を持つことはそんなに良いことなの?こんなかんじで今まで考えてきたので、うまく答えられるはず無いよねえ。もう、困ってしまった。

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今日のケンカ、要はみんなにドンドン指示をする強いリーダーがいないことが原因らしい。マダムはものすごく優しい人で、とやかく指示をだしたり、文句を言ったりするような人じゃない。これは、負担になるらしい。きっちり指示を出してもらえれば余計なことを考えなくて済むということのようだ。お互いに気を使って仕事をするのが、あまり上手じゃないのかなあ?と思った。

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でも、これくらいのことから、日仏間の文化的差異にまで考えをめぐらすのは、考えすぎ。「あのおばちゃんも、最近ストレスがたまってたのかもね。」と考える方が良いように思う。「個人主義のフランス」といったことが頭から離れなかったら、物や人が見えにくくなる。そもそも、欧米で個人主義が確立してるって本当?舶来の物だからって個人主義を良いものと思っている節のある日本人、本当にそうなの?

食事は九時くらいからだったと思う。洋風雑炊はとっても美味しかった。ワインを少々飲み、いつものようにスープと一緒にフランスパンを食べた。フランス国内でも食事は様々なのだろうけれど、ここには僕が想い描いていたフランスの食卓があった。この時期多くの人が働いているので、いつもフランスパンが何本もおいてある。

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食後に、アップルパイとカフェ。すごく大きく切ってくれた。中学くらいの時だと底なしかっていうくらい食べていたけど、最近はめっきり量が少なくなった。だから大きく切ってくれて嬉しいのだけれど「食べれるかいな?」って思った。浪人時代にドイツに行ったときクレッチマーおじいさんという以前教会に勤めていた人にお世話になったことを思い出す。家に招いてくれては必ずケーキをだしてくれる。おじいさんから見たら僕なんかまだまだ「若いもん」だから、ケーキを食べろ食べろとどんどんすすめてくる。一度に5つ以上食べたこともある。日本のケーキと違ってドイツやフランスのケーキの大きさ!参ってしまうね。ドイツでは1週間に1年分のケーキを食べたと思う。もしかしたら、今回もとんでもない量を食べることになるのかなあ?

それにしてもみんな良く砂糖を使うね!広辞苑くらいの箱に砂糖がぎっしり詰まっていて、2、3個入れる人もいる。

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アップルパイを食べ終わったのだが、実はまだ終わりじゃなかった!片付けを済ませた後マテューのお土産のチョコレートと僕がお土産に持っていった日本酒「飛良泉」が出てきた。冷たい方が美味しいですと言うと明日冷やして飲むことになり、今日は常温で。みんな、初めてなので一口分しか注がせてくれなかった。でも、おそるおそる飲んだ後、顔に「へー」と書いてあった。予想外に「美味しいじゃない」と思ったみたい。ダヴィドもマダムもすごく美味しいと言ってくれた。マテューはまだ18だしちょっと好きじゃないみたいだった。彼は、ワインもあまり飲まないのだから無理ないよね。
僕もこのお酒は初めてだった。辛すぎず、飲みやすいが非常にしっかりした味だ。大吟醸じゃないのに、凄い値段だったのだけど、買って良かった。僕が一番喜んでいたかもしれない。

その後、マテューのチョコレートが僕を睨めつけていた。正直、もう勘弁してくれと思ったが、そうは問屋がおろさない。フランスから帰ってきたらやせてるやろうねと思っていたが無理みたい・・・

歯を磨き、シャワーも浴びずにバタンキュー。すごく、すごーく長い一日だった。

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9月20日(金)

昨晩、マテューが7:30くらいに起きると言っていたのでタイマーをその時間にあわせていたのだが、6:00くらいから目が覚めた。日本時間だともう昼を回っている時間だから、そりゃ目も覚めるわな。ベッドはほのかで柔らかい香りがし、ぐっすりと眠ることが出来た。疲れもかなりとれている。7:30くらいに起きだし、着替えを適当に済ませるとカメラと三脚を持って外へ。霧が太陽の光を散らし、いつ太陽が顔を出したのか分からないまま辺りはしだいに明るくなっていった。吐く息は白くなり、じっとしているとだんだん体が冷えていく。

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おっ、馬がおる!アヒルも、白鳥も。誰か知らないが毎朝餌をあげているみたいだ。望遠レンズも使って写真を撮った後、キッチンに戻るとM.カローや真っ赤な顔をしたじいちゃんがいる。待って下さいよ、こんな朝っぱらからワインですか、あなた方。なんかもういい気分になってるじゃないですか。僕はカフェを飲む。すごく苦いが、んー、美味しい!とても濃いコーヒーだ。僕が点てるのより濃いんじゃないかな。器はみそ汁のお椀みたい。いぜん得た知識と現実が結びついた瞬間。

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イヴリンヌにミルクを注いでもらった。野菜を切っている手を止め、手を洗わせてしまったので自分でやれば良かったと後悔した。でも、「ミルク下さい」の一言を声に出すまでに心の用意がいろいろあったのでそこまで考えられなかったんよ。まず、文章を頭で思い浮かべ、次ぎに「ミルクをいただけますか?」って言おうかな、それとも、もっと丁寧な表現がいいかな等といろいろ考える。そして心の準備をして、舌の先まできている言葉を一気に押し出すのだ。そしたら見事に相手の状況を無視した発語になってもーたちゅーわけだ。

フランスパンとカフェオレが僕の朝食だった。ほんとにちょっとした食事だ。フランス語で朝食のことをプティ・デジョネ(小さな・昼食)というのが良く分かる。 昨晩は12時近くまで食べていたし、昼にはボリュームのある料理が待っているので朝食はこれで十分だ。


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9時くらいからだったか、もう少し早い気もするが仕事が始まる。大失敗の予感なんて全くない。足どりも軽く、軽快にステップをふみながら今日の場所へ向かう。もう何をして誰とどんな会話をしたかなんて覚えていない。なぜなら・・・



「サクッ」・・・



やってもーた。中指の内側、爪のそばを切ってしまった。あー、血が



ポタポタ



けっこう深く、肉まで見えている。トイレに行って良いかと聞いて急いで家に戻る。確か10時くらい。ドアの前で車から降りてきた人と挨拶を交わす。しまった、僕の異様に気付いたみたいだ。頼むから心配しないでくれー。マダムに知れたら大変だ。こういう事態を彼女は心配しているんだ。昨日の昼の食事で、マダムとブドウ摘みの仕事について話しているとき僕は当然なんでも手伝いたいと言い、またお給料とかは全く要らないと言っていたのだが、政府のレジストラシオンがなんとかで働かせることは難しいということだった。僕は観光ビザで来ているし、もし事故でも起こったらマダムがひどく面倒なことになるらしい。事を了解した僕はそれ以上言わなかった。

マダムを裏切る事態発生!知られたら絶対まずい。トイレに行って手を洗うが、水が赤く染まるくらい血が出ている。痛さなんか忘れてしまって、とにかくマダムに知られたらまずいとそのことばかりが気になっていた。傷はかなり深く、「これは、二、三針縫わないといかんばい」と思ったが病院に行くわけにはいかん。そのとき、ふと関空で死亡と病気、けがの保険に念のため入ったことが思い浮かんでくる。笑ってしまった。使う絶好の機会だが、病院に行くわけにはいかん。トイレから出て二階の部屋に向かうが、当然のごとく笑顔を振りまく。ジャニンヌが心配そうに「大丈夫?」と聞いてくる。僕は、「ウィ、ウィ」と言って指を隠しながら部屋へ行く。まさか使うとは思わなかったが、今回かなりの枚数のばんそうこうを持ってきていた。あまりの用意の良さに自分一人で感心する。靴下で指を隠し、ばんそうこうを持ってトイレへ。指を洗いばんそうこうをベタベタ貼る。ふと見ると血が床に



ポタポタ



ついているので慌てて靴下で拭いて出る。ばんそうこうを3~4枚重ねているが、血がにじんでくる。

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仕事場へ戻るが、血はいっこうに止まらない。気付かれたくないので大丈夫だと言って仕事を始める。左手でブドウの房を支えて右手に持ったはさみでチョキンとするので、この状態ではブドウに血がつく。ハサミを左手に持ちかえて、「おっ、俺って、あったまいー」とほくそ笑む。つくづくアホである。

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昼まであと2時間くらいある。「早く時間よ過ぎてくれー」とそればかり思っていた。だから余計に長い。

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やっと、お昼だ。トイレで手を洗うとばんそうこうから血が流れ出てきれいになるが、じきにじわーっと血がにじんでくる。全然止まっていないやんけー。

食事が何であったかは、完全に忘れてしまった。フォークを使うときも中指をかばうようにし、ひた隠しに隠す。フランスパンを手に取ると血がついてしまう。それくらい血が出ていた。昨日はあっという間だった楽しい食事がなかなか終わらない。

食事が終わって、午後は仕事をしないことにした。「手紙などを書きたいので」と休ませてもらって部屋に戻る。

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何とかして血を止めないかん。僕は、おもむろにばんそうこうをはぎ取ってフーフーと息を吹きかけ始めた。とにかく乾かしてかさぶたを作らないかんね。ベッドに横になり指を心臓より高い位置にして、必死にフーフー。よっしゃ、これは何とかなるばい。酸欠気味になりながら続けていると30分くらいでなんとか傷口がくっついた。

水で流すと、もともこもないので、夜シャワーを浴びるとき左手にローソンのビニールをした。

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今日は金曜日、明日は午前中しか仕事がないらしい。そんな話を聞いていたが、なんか様子がおかしい。昨日のケンカの続きらしい。マテューもダヴィドも「あーあ」とあきれた顔をしている。昨日怒っていたおばちゃんの旦那であるジャックがばたんとドアを閉めて出ていった。うわー、おこっとーばい。

その夜、食事中はケンカの話。マダムとダヴィドとマテューがいろいろと話をしているが、全然分からない。不思議なもので、一緒に食事をしているのだが、3人が異次元にいるように思えてくるのだ。僕が異次元にいると言った方が正確かも知れないが、とにかく映画の中の宇宙人を傍観しているような気分なのだ。知っている単語が出てきて話が少し見えてくる度に僕はその場に現れてくる。僕のアンテナに何かが引っかかったときのみ透明だった僕の像がすーっと現れるのだ。

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3人の話の様子では明日の仕事はなしになったみたいだ。そういえば、ジャニンヌが帰り際に「また、月曜日にね!」と言っていた。まあ、ほとぼりが冷めるまでは待つしかないよね。

手をかばいながらベッドに横になった。今日は、指を切ってしまったのでまわりに注意を向ける余裕はほとんどなかった。昼、俺は何を食べたんやったかいな?おいしかったのは覚えとっちゃけどねえ。

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9月21日(土)

「指はどげんなっとーかいな?」 起きてすぐ、指の様子を見てみた。よし、順調にくっ付いていきよるな。シーツに血は付いてないし、指をかばいながら寝た甲斐があった。なーんて言ってるが、疲れてたし、指のことなんかお構いなしに豪快ないびきの中で寝とったんやろうね。

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7時30分くらい。下で物音がする。たぶんルセットが起きてきたんだ。ルセットとは、マダムのファーストネーム。表現が「マダム」から「ルセット」に変わったのにはわけがある。木曜日にブドウ摘みの機械を見に行った帰りにルセットから「マダム、マダムというのはよしてね。年に見えるし、親しいんだから。」と言われたのだ。ルセットが独身ということは知っていたけど、ある程度年齢がいったら「マダム」と呼んだ方がいいと思っていたし、松蔭の集中講義の時、担任のペルツ先生にはいつも「ウィ、マダム!」と元気良く返事をしていた。だから癖になったのか、ルセットにもそう返事をしていた。頭では「これからはルセットって呼ぶんだ」と分かっている。でもやっぱり、始めのうちは「ルセット」って言ってもいまいちしっくりしない。そういえば小学校の時にもこんな事あったよなぁ~。新しい友達が出来て「山田くん」とか初めの頃は呼ぶんだけれども、それじゃ何となくよそよそしくなってくる。周りが言ってるみたいにあだ名で「山ちゃん」とか「やま」とか「やまっち」なんて、そろそろ言いたいんだけれども最初は気恥ずかしいんよね。

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ルセットといくら親しくなったとはいえ、お世話になっている身だしマダムと呼びたい気分は抜けない。でも、彼女がそう望んでいるんだし、こっちの慣例に従うことにし、努めてルセットと呼んだ。マテューに僕の気持ちを言うと、良く分かってくれた。こっちの人達にとっても多少は考えを要するものなんやろうね。マテューは「マダムビエル」「マドマゼルビエル」「ルセット」の3通りの呼び方をしているらしい。

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8時くらいに木の階段がきしまないようとにそろーっと降りる。ダヴィドとマテューはまだ寝ているからね。下へ降りるとルセットとM.カローが話をしている。ケンカについて話をしているみたいだ。その後、入れ替わり立ち替わりここで働いている人達が来ては彼女と何か相談して帰っていく。一緒にいると気まずい雰囲気。僕は部屋に戻ることにした。本当は今日の午前中もブドウ摘みをするはずだったんだ。けれど、一昨日のケンカが昨日もあとを引いていたので休みにしたのだろう。そんなに大規模なブドウ農園ではないのでみんなのチームワークがとくに必要なのだ。働いている人も20人前後とそんなに多くはないし、バラバラになってしまったら今年のワインそのものが台無しになってしまう。マダム(やっぱり日本語で書いているし僕の中ではマダムの方がしっくりするのでやっぱりマダムと書こう!)もこのことで少し疲れているみたいだし、ゆっくりする時間が必要だね。

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日中、ケンカのことで疲れてるといった様子はほとんど見せないマダム。でも、今一緒に生活しているマテューとダヴィドと僕には夜の食事の時に「困ったねぇー」という表情もする。4人でいろいろ話もした。僕は何とかマダムの力になりたいと思うのだが、まともにしゃべれないので見守ることしかできない。その点、マテューとダヴィドがいてくれたことは、ものすごくよかった。二人はマダムの良き理解者で彼女を応援していた。夜の食事の時にそう思った。特にマテューはいつも機知にあふれた冗談でマダムや僕らを笑わせてくれた。彼が意識したかどうかは別にして、マダムはきっとホッとしたやろーね。

入れ替わり立ち替わり入ってきた人達との話も終わってしまったのか、階下は静かだった。そこは僕らが夜4人で食事をするところで、昼食をとる美術室の隣にある。床にはオレンジ色の大きな石のタイルが敷き詰められていて、入り口の横には大きく立派な暖炉。そのもひとつ横はキッチンで、正面の窓を覗くと、ツタが前髪のようにじゃまをしているがその向こうには、辺り一面ブドウ畑が広がっている。食器を洗ったりしていると向こうの方に時たまTGVが走っている。二階に続く階段の下には古い冷蔵庫。低く鈍い音を響かせながら居座っている。高さはあまりないがでっぷりとした感じで門は丸みを帯びている。エル字型に並んでいる机の上にはワインボトルやフランスパン。誰が持ってきたのかは知らないが、油で揚げたあと砂糖をたっぷりまぶしたお菓子があった。それをつまみ食いしていると、妹のアネットが来て朝食を用意してくれた。カフェオレにパン。美味しいカフェオレをスープのようにしてたっぷりと飲む。コーヒーが大好きな僕にはたまらんね。

食事のせいか、こちらに来てお通じが非常に良くなったんよ。コーヒー、そしてワイン。利尿作用もあるし、新陳代謝を促進させるんやろう。体の調子はすこぶる良い。


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ケンカのお陰と言ってはなんだけど、指をけがした僕にとって今日、明日の2連休はありがたい。指で思い出したが、そういえば昨日ワインを作っているところを見せてもらったのだ。昨日は指のことで精一杯だったので忘れていた。うん、確かに見せてもらった。建物のなかはものすごいにおいだった。正確に言えば、ワインのにおいと二酸化炭素の鼻に及ぼす感覚が一体になってすごいのだ。昔、父のお土産の中に入っていたドライアイスを水に入れて遊んでいる時、机の上を漂う白い煙に顔を近づけて息を吸ってしまい「ゲホッゲホッ」。言ってみればまあこんな感じかな。それにきついワインの匂いを足せば大体同じ感覚が得られる。・・・かもしれない。はしごを登って上から樽を覗くと気泡がどんどん浮き上がっていた。菌が良く働いている証拠だ。手を泡のそばまで下げてみるとすごく温かかった。突然、ボコボコといってワインが下へ流れ込んでいって上にはもう何も残っていない。何が起こったのか、何の為なのか分からなかった。

そのあと、4人で食事をするテーブルでマダムはワインづくりの行程を説明してくれた。現在フランスの半数のところでブドウ摘みが機械で行われ、また95%のワインづくりの過程でワインの循環に電気のポンプが使われているそうだ。ここでは、手摘みだし、電気ポンプも使っていない。ワインを循環させる際、ここでは圧力の高低を利用した伝統的な方法だという。これを知りたい同業者も多いそうだが、ひ・み・つ!だって。お父さんから受け継いだものを大切に守っているのだ。

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藍染めの場合、「藍の花が咲く」という。藍の花とは、泡の集合体で小宇宙の
さながら集合体のようだ。それと同じようにワインの泡も色は違えど、泡の花が咲く。


昼食をいただいた後、マダムは僕ら3人を乗せて車を走らせる。この前、見逃したブドウ摘み取り機を見に連れていってくれるのだ。あっ、見えてきました。すごい大きさだ。トラクターを縦横に1,5倍して、高さを2倍した位の迫力だ。今日は明け方雨が降ったので、一台の小さい機械が前を走って風を送りながら、ブドウについた水滴を吹き飛ばしている。

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マダムが一見頑固そうだが、気の良いおやっさんと話をしている。たぶん今年のブドウの出来とかのことを話しているのだろう。と思っていたら、なんと機械に乗せてくれるらしい。マダムが学生三人に見せてやってくれないかと、頼んでくれていたのだ。僕は先にダヴィドと一緒に乗せてもらう。青で塗られた大きな機械の横から足を高々と挙げながら乗り込んだ。おじさんが、僕らに機械の説明をしてくれる。音がうるさかったこともあるが、そもそもフランス語の余り分からない僕には何を言っているかはさっぱりだ。だけど、機械を見ているとその仕組みはだいたい見当がついた。垣根のようなブドウの樹をまたいだその機械は、弾力性のある2メーター近い何本もの棒でブドウの樹を両側からすごい勢いで揺らすのだ。すると、ブドウの実だけがどんどん落ちていく。それをベルトコンベアーのようなものがうけて、大きな入れ物の中へどんどん入れていくのだ。写真を何枚も撮った。うまく写っていると良いが・・・。

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マダムとマテューが乗ったあと、おじさん達にお礼を言って僕らは帰途につく。という予定だったが、途中でフェルナンドというマダムのところで働くおじさんに会い、彼の車についてもう一台の機械を見に行った。彼の息子はとても可愛く、慣例にならい、ダヴィド達と同じように「チュッ、チュッ」とキスを交わす。いやー、やっぱ照れるね。別に誰からも何も言われんのやけど、一人で照れてしまうんよ。「何歳?」とか、お約束の質問などをして、通じたから嬉しかった。でも、彼はフランス人ではないあやしげなお兄さんを見て少々警戒気味。


ヨーロッパは個人主義。そして日本は全体主義?
さて、個人主義だと思われているヨーロッパでは、日本人から見ると過剰なまでの
接触がある。挨拶のチューにしても、握手でも。
一方、個人主義など未発達と考えられている日本は、逆に接触を極度に排除する。和式便所然り、個人の箸然り、挨拶の仕方然り。これは何でしょう?


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これ、一応昔の私。おっさんだけど、今よりは若い?!

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そうそう、今日、明日と仕事がないから僕らは夕方からボルドーへ繰り出すことになっていたんだ。家について用意を済ませた僕らはマダムにリブルンヌ駅まで送ってもらった。ダヴィドが現金を余り持たないからチェックでみんなの切符を買う。あとで、72フラン彼に返さんといかんな。それにしても、なかなか買いおわらんねぇ。「この駅の人は何をもたもたしとーと?」って思っていたが、日本が早すぎるんかなぁ。日本のスーパーとかで買い物すると、レジのねえちゃんや、おばちゃんの手つきはものすごく早いんよね。僕なんか毎回急かされるようにしてお金を払うもんね。焦ってしまって、たまに小銭を落としてしまう。要領の悪い兄ちゃんがレジに立ってると、僕はホッとして、「頑張れ」って思うとよ。新幹線の切符を買うときも相手の言うがままになちゃって、後悔してしまう時もある。

ダヴィドは、まだ切符を買っている。僕は売店でいろんな絵はがきを買うことにした。いろいろな硬貨を見ながら、「これは、何フランやー?」と迷いながら数えていると、気立てのよい店のおばちゃんが「やってあげるわ!」といって、代わりに数えてくれた。「メルシー!」

学生はどこへ行っても金を持たないもので、TGVなんかにはなかなか乗れない。当然のように普通の乗車券を手にしている僕たち。入り口でガチャンと乗車券に穴をあけ、ホームで待つこと数分。TGVが滑るようにして静かに入ってきた。マテューが側に降りてきた車掌さんと話をしている。すると、いきなりマテューとダヴィドがTGVに乗り込み始めた。えっ!?なんと車掌さんがOKしてくれたらしい。もちろんただで。マテューが「乗せて下さいよー。」てな感じで言ったら「あーもう、よかよか。」と許してくれたみたいだ。

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僕らの座席の前で女の子たちがにぎやかに会話をしていた。マテューが言うにはフランス人ではないらしい。でも、「コーゾー、" Le?on 1, Bonjour ! " だ。」とか言う。フランス語の練習だとか言って、姉ちゃんに声を掛けろというわけだ。「よっしゃ、やっちゃろーやんけ。」と僕は、後ろを向いてきた娘と目があったので「 Bonjour ! 」と声を掛けた。ベルギーからの人達らしい。すぐに英語に切り替えていろいろ話をした。マテューは「コーゾー、本気にしたの?」と言わんばかりの表情だ。電車を降りた後マテューが「コーゾー、やるねー」だって。彼女たちは、卒業したばかりで職がないので、これからボルドーで3カ月ほどアルバイトをするらしい。ワーキング・ホリデーVISA を取ったと言っていた。仕事が見つかるまでフランスでいろいろ経験を積むそうだ。でも、フランスの失業率もかなり高いからねぇ。簡単に見つかるのかなぁ?

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さあ、ボルドーに到着です。まずはなんと言っても宿探し。ボルドー駅から街の中心までは、だいぶん歩かないといけない。道すがらsex shop などもあったりして、覗こうとしたら、マテューが「ママは許しませんよ!」なんて言いながらビシッと僕の手をたたく。「マテュー、冗談だって、冗談!」

ユースホステルの前に到着。さっきの続きで「レッスン3!『いくらですか?』」と二人がこっちを向いて言ってきた。「えー!?俺が聞くわけ?」てなわけで、僕が宿泊費を聞く羽目となる。すごく安いんだね、ユースホステルって。800円もしなかったと思う。でも、市街地から遠いので、他を探しに繁華街へと向かう。途中で、カフェで休憩した。僕はビールを飲んだ。3人とも現金を余り持ち歩いていないので僕がカードで払い、帰って清算することにした。

再び宿探しに街を歩き回る僕らだが、なかなか安いところは見つからない。あるホテルに寄ってみると、学生くらいの女の子が店番をしていた。店の主人は出ているらしい。その娘は ”au pair ”だという。あー、集中講義でならった、あれね。食・住付きで、ある家庭の家事などを手伝うのだ。その娘が教えてくれた小さなホテルに行くと、一晩1500円くらいだったので、そこに決め、カメラを置いていざ街に出発だ。

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ヴァージン・メガストアーで「星の王子様」のCDを見つけたが、「紅の豚」のビデオとシティーハンターのマンガを買ったのであきらめた。「紅の豚」もマンガもどちらともフランス語版だ。映画「LEON」に出演していたジャン・レノが豚の声を吹き替えしている。店内には日本のマンガが結構置いてあった。ドラゴンボールやアキラもあるやん。いやー、それにしてもフランス人歌手のCDがいっぱい置いてあるねぇ、当たり前やけど。

マテューが、誰か分かんないけど「おじさんに会いに行くんだ。コーゾーにも紹介してあげる。」と言ってきた。「エー、緊張するね。どんな人なん?」「パリにいたりもするんだけど、ボルドーに住んでいるんだ。」「ふーん。そうなんだ。」と僕。「どげな挨拶ばしたらいーっちゃろーかー?」などと考えていた。のだが、詳しく聞いていくうちに彼がいつもの冗談を言っているってことに気付き始めた。しかも今度の話は大きかった。あまりに大きかったので最初僕には、理解できなかった。えっ!?フランス共和国の首相??首相はボルドーの市長でもあるらしい。いくら福岡とボルドーが姉妹都市やからって、俺みたいな小市民とは無縁のお話。でも、初めは本当に会いに行くんだと思ってたし、そのつもりでマテューと会話をしていたと考えると、いやーアホやねぇ、俺って。18のマテューにやられてしまった。

カフェに入って、ホットドッグやサラダを食べながら、まず何をするかいろいろ話をした。映画を見に行くことになったのだが、思いっきり寝てしまった。確か、「秘密と嘘」みたいなタイトルだったと思う。イギリス映画で、やたらうるさかったことだけは覚えている。眠たいとき、映画館やコンサートホールって最高に気持ちが良いんよね。たまに、大きな音でビクッとするんだけどまた夢の世界へ帰ってしまう。「映画どうだった?」「えっ?うん、気持ちよかったよ。」なーんてね。そういえば、ここでも僕がカードで料金をはらったんよね。どこでもカードが使えるんだなぁ。


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さあ、今からがボルドーの夜やね。一軒目に入ったバーはアイリッシュ・バーで、日本でも最近よく見かけるギネスを飲む。くらーい店内にはタバコの煙が充満していて息苦しい。流行ってはいるのだけれど、なんとはなしに、うらぶれた雰囲気が漂っていた。歩いたら少しばかりきしむ木の床に傾いたテーブル。壁には、写真や絵が張ってある。ときおり肩から、駅弁を売る人のように箱をかけた、タバコ売りのおじいさんが入ってくる。あれで生活しているのだ。ダヴィドはタバコを吸うのだけれど、まだなんかぎこちない。ダヴィドのお父さんは、昔ボルドーの方に来ていてマダムからワインを買っていたらしい。そのつてで今回遠いフランスの北の方からやってきたというわけだ。マテューも確かその様な関係ではるばる来たのだ。「はるばる」といったら僕が一番「はるばる」やわな。


二軒目は、全然流行っていないところで味もそっけもなかった。特徴としたら、だるそうに座っている2人の店員と古いジュースボックス。もう、1時はとうに回っていた。少しおなかが空いたので、僕はスパゲティとエスプレッソを頼んだ。男の人が「こんな時間にやめてくれよー」と言わんばかりの表情で注文を受ける。ちゃんと作ってくれるんやろーねと思っていたが、なんとレンジで温めてるだけやんけー!いやー、まずかったなぁ。

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三軒目に入ったのは、ディスコみたいなところなのだが、みんな踊っているわけではなく、だるそうに座っている兄ちゃん、タバコを吹かしながら物思いに耽る男女、キスしまくる恋人達、いろいろだった。音楽がものすごい音量で鳴り響いていて、音で四方をふさがれ動くのにも一苦労という感じだ。

そこを出たときは、空気がひんやりとして気持ちが良かったが、頭の中の音楽はなかなか鳴りやまなかった。そんな頭を引きづるかのようにして歩いていった。マテューとダヴィドは何かを買って食べていたが、僕はさっきのスパゲティーのおかげで気分が悪かったので、何も食べる気はしなかった。そこから、僕らはあてもなく夜のボルドーを歩き回った。辺りはすごく暗く、色とりどりのショーウィンドーは輝いているが、石造りの大きな建物は暗闇の中でさらに威容を誇っている。道を歩いていると「タバコくれない?」と声をかけてくる人が結構いた。「ここはどこ?どうやって帰りゃー良いんかなあ?」と聞いてくる酔っぱらいの兄ちゃんもいた。途中で2人は立ち小便するし、酔っぱらって陽気になった小柄な女の子が声をかけてくるしで、いろいろあった。

ホテルに戻ったのは朝の4時。呼び鈴を鳴らして、ドアを開けてもらう。おじさんが眠そうな顔をして出てきた。すいません。

これから眠りにつくのではあるが、ベッドは2つ。さて、どうやって寝るかだ。僕は電車の中でも立ったまま寝られるし、寝る場所を気にしないたちなので、「椅子で良いよ」と言うがマテューとダヴィドは承知しない。僕が一番年上で、お兄さんだから「俺が椅子で寝りゃーいいやんけ」と思うが2人は俺が年上だなんてこれっぽっちも思っていない。知っているとしても、年なんて関係ないと言う。まあ、それもそうだ。てなわけで、僕は、ダヴィドと熱い夜をともにすることになった。マテューが一人でにやけてる。くっそー、何でフランスまで来て男とベッドをともにせないかんかねぇ?

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ちょっと、その時の写真がないのでパリの写真をアップします。

9月22日(日)

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朝起きて、順番にシャワーを浴びた。水の勢いが悪いとマテューが言っていた。確かに悪い。でも途中でホースがよじれていることに気付き、勢いのいいお湯で体に染み着いたタバコの臭いやらを流す。トイレと一緒になったバスなんだけど、電話ボックスのような空間の中でシャワーを浴びる。今までの習慣があるから、風呂にはいるときは腰をかけて湯気の中でフーッと一息つきたいね。

カーテンを開け、木でできた今にも壊れてしまいそうな窓をギーッと開け、下の方を覗く。ふぅーっ、建物の影はもうかなり短い。昨日ベッドの下に隠しておいたカメラを取り出して、テラスからカメラでカシャ、カシャ。ロビーに降りていきカードで3人分の支払いを済ます。一人当たり1400円だから結構安いよな。食事は付いていなかったので、ボルドーの駅へ向かう途中、マテューとダヴィドはパン屋さんでお菓子みたいなパンを買った。僕はと言えば、昨日のレンジ即席スパゲッティーがボディーブローのように腹にこたえていた。にもかかわらず、少し食べてしまった。

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三人とも昨日の疲れが残っているのか、よたよた覇気もなく歩いていると、いつの間にか駅に着いてしまった。ボルドーの駅は巨大な博物館のような空間になっている。プラットホームは阪急の十三駅やJR博多駅みたいなんだけれども、待合い室や乗車券売場は馬鹿でかい博物館の中にあるかのようだ。天井は3、4階くらいの高さがあるんじゃないかなぁ?ギリシア神殿は見たことがないけれどもそういうのを真似しているんだろうことは分かった。この柱はドーリア式、イオニア式?それともコリント式かねぇ?世界史の知識を振り返る。高校では世界史を履修していたんだけど、古代文明とギリシア、ローマだけは得意なんよね。「よっしゃ!勉強せないかんね。」と奮起したら必ず初めからやり直す。必ず途中で挫折して、再度奮起するんだけど、やっぱり初めからやるので嫌でも最初の方だけは頭に入ってしまうのだった。

売店にはたくさんの雑誌。天井まで届かんばかりの置き方だ。どうやってとるんやろーと思ってしまう。バイクの雑誌を5、6冊見比べてみた。どの雑誌にも日本のバイクは必ずのっとーね。

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売店とかをうろつきながらゆっくりしていた僕ら。だがふと気付くと「あ゛ー、電車来とーやん。」三人は猛ダッシュして飛び込むようにして乗り込んだ。今回の電車は普通電車。リズミカルに揺れながらゆっくり走っていく。大きな橋を渡ったりしながら気分は「世界の車窓から」。こっちの座席はすごく大きい。西洋の人は日本人よりも大柄だから理屈で分かる話なのであるが、座席に座ると自分が本当に小さな子どもになった気がするね。ダヴィドが横でお金の計算をしている。僕がカードでほとんど払ったから、2人の返済分を計算しているのだ。マテューは雑誌を読み、僕はマンガ「シティーハンター」を読む。(正確には「見る」)

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さあ、リブルンヌ到着。マダムが迎えに来てくれるので、駅の前でしばらく待つ。今日は青空もたまーに見えるが全体的には白くぼんやりしている。輪郭の捉えどころのない雲がこの街を覆っている。いまいちスッキリしない。フランスに来てから曇りが続いているなぁ。晴れてくれないかなー?

マテューがカメラを見せてと言ってきた。貸してあげると、僕を撮ろうとしている。「ちょー、待ってよ。マテュー撮りきーと?」心配だったが、とりあえずポーズだけはとった。

待つこと10分くらいでマダムが迎えに来てくれた。僕らは、赤いトヨタに乗り込む。車で通り抜けるのは右も左もブドウ畑。車窓から手を伸ばして写真を撮ったりした。それはそうと、ケンカはどうなっているんかなあ?明日の仕事が楽しかったら・・・とぼんやり考えていた。

家の入り口の脇には紫陽花(あじさい)が咲いている。へー、こんな時期に紫陽花が咲くんだ。日本では梅雨の時期だったよなー。フランスの梅雨は夏が過ぎてやってくるのだろうか?

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暖炉に火がついています。朝は寒くなってきたけんね。おや、なんか香ばしい匂いがするなー、と思っていたら、暖炉に網を置いて妹のアネットがお肉を焼いとーやん。えー、もう昼御飯の時間かー。ボルドーでパンを食べるんじゃなかった。今、二時くらいだけど起きたのが遅かったし、まだお腹が空いていない。

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今日は、日曜日なので仕事はなく夕方サンテミリオンへ行くことになった。サンテミリオンはワインでとても有名な古い町。マダムの家から車で行っても歩いても10?位のところにある。「おかあさんに会いに行ってくるから」とマダムは僕らを降ろして車でどこかへ向かっていった。「あとで迎えに来るからねー」と笑顔で。

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教会の中で何か展示会みたいなものをやっている。階段で二階の方にあがっていくと途中にポスターが貼ってあった。ボルドーと福岡が姉妹都市で「第10回日本の芸術家展」なんてことが書かれてある。実際に中を見てみると絵、彫刻、書道の作品などがあった。不意に、いやーな予感。「こーぞー、これなんて書いてあるん?」うーん、見事的中。ダヴィドが聞いてきた。なんか訳の分からない書体で書かれていて、漢詩みたいだ。困った僕は「ごめん、わからん。昔の字だし。」と言って、内容の何とかつかめたものだけ解説した。「もう少し漢文を勉強しときゃあ良かったなぁ」と思ったりもしたが、高校時代に杜甫の気持ちや気分なんて理解できんよね。頭では分かっても感じでは決して分からない。要するに分かっていないということなんだけど、自分自身が「感じ考える」という過程を経たら昔の人の言葉なんかがストーンと落ちてくることがあるよね。最近少しづつ分かってきた。

そこを出て石が綺麗に敷き詰められた古い町を散歩していた。「オー、コーゾー!元気かー?」あっ、セバスチャンだ。彼女とおデート中やな!2人は南仏の学生で彼女の実家がボルドーのようだ。セバスチャンは彼女の家で寝泊まりしている。「セバスチャン」いいねー、この響き。「ハイジ」を思い出すね。セバスチャンはいつでもよく笑う。すごくひょうきんで、しかも優しい。大学では化学を勉強していて将来は、と言っても今4年生だからもうすぐだけど、化学と物理の先生になるらしい。彼の授業を受ける子ども達は幸せだろうな。
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2人と別れたあと、僕らは石畳の道をさらに街の奥へと向かって進んでいった。道すがら小さな喫茶店があり、その店頭には何やら黒いお菓子みたいなものが並べてあった。「ん?『カヌレ』って読むのかな?」ボルドー名物とか書いてある。「もしかして!」と思って手帳を開いてみると、やっぱり書いてあった。妹にボルドーへ行ったら食べてこいと言われていてメモっていたのだ。さっそくひとつ買ってみた。真っ黒やなあ。パク。あんまり甘くない。お芋みたいやん。それほど「うまい!」とは思わなかった。でも、焼き立てはきっと美味しいんだろうな。マテューとダヴィドに分けてあげた。ひとつ140円くらい。安い気もするし高い気もする。こちらでバイトをしてお金を稼いだ経験なんてないから、いつまで経ってもなかなか金銭感覚が身に付いてくれない。日本円になおしてみてもそれは日本で売っていた場合の感覚しか分からないから余り意味がない。

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カヌレを食べ終わるころ文房具屋さんの前に立っていた。お店の前には、店の中が外からは見えないくらいたくさんの絵はがきが並べてある。気に入ったのを片っ端から選ぶ。立てた畳を横に5枚くらい並べて干しているといった感じなんだけど、反対側に回ってみると、これまたいろんな葉書が置いてあった。でも、こっちのは通りに面した方とは趣向が違って訳の分からないものがわんさかあるある。樽の中でワインを飲む裸のおばちゃん。ブドウ畑の真ん中、夕日を浴びながら裸になってブドウを口に運ぼうとしているお姉ちゃん。いろいろあった。ブドウ畑の中を通っていてもそんなお姉ちゃんはいなかった。アホやなーと思いながらも迷わず買った。よっしゃ、寮生に送るぜ。


日本に葉書を出したいなー。切手を求め売店を探す。財布を覗くと、んー寒いねぇ。「近くにキャッシュサービスがあるよ。」とマテュー。カードでおろすことにした。財布からカードを取りだした僕にマテューが「コーゾー、やらせて!」「え゛?!なんでー?わからんめーもん!」「ボルドーでコーゾーがやってるの見て、暗証番号、覚えてるよ。」「嘘やろ、マテュー!」しかし、僕の代わりに(ちゃんと?)おろしてくれたマテューであった。

売店では半端じゃなく綺麗なお姉ちゃんが喫茶していた。まあ、これも重要だが、今は置いといて、そう切手!残念ながらお目当ての切手はなかった。その代わりじゃないけど、LOTOを買ってみた。「上手くいったらコーゾー、100万円だよ。」「ダヴィド、マジ?」よし、一枚200円だ。これに賭けるぜっ。横でビールを飲んでいるおいちゃんが、「ジャンジャカジャーン!」などとかけ声を掛けてくれた。削る指にも力が入る。「ん?」なんか同じ模様が出てきた。すると隣のおいちゃんが騒ぎだした「パンパカパーン!」「えっ!?うそっ?当たったと?」とビックリしていたら、200円当たっていた。おいちゃん、そんな騒がんでよ、恥ずかしいやん。でも少し嬉しかった。そのお金でもう一回挑戦や!今度は外れ。上手くいかんね。

「魔女の宅急便」で見たことがあるようなサンテミリオンの街の中を僕ら三人はゆっくり歩く。映画で見たようなクラシックな車もボボボボボと走り去っていく。マダムに降ろしてもらったところまで戻ると、ブドウ畑の向こうに太陽が見えた。教会の周りには赤、黄、紫、白など小さな可愛い花が競い合うようにたくさんたくさん咲いていた。

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街は教会をてっぺんにしてなだらかに丸く広がっている。下の方へは降りていく時間がなかったので、またの機会にはぜひ足を運んでみたい。
[2006.02.08(Wed) 23:24] ぶどう摘み体験記Trackback(0) | Comments(3)
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懐かしい by marie-claire
これ、メールで送ってもらって読んだので覚えてます。印刷したのも
おいてますよ、何回も読んだから、覚えてるフレーズがあったりして。懐かしい、すごく懐かしいです。
写真も。はじめてみたときのこととか、個展のとき見たときのこととか、そういうものまで付随して思い出します。

9年前ですか、うわあ・・・

光陰矢の如しです。 by Kozo
marie-claire様、
いつもコメント感謝です。ホント、ありがとうございます。いやはや、時の流れは早いものです。最近特にそう感じます。これは一体全体なぜなのでしょう・・・。個展で出した写真も今度まとめてブログに載せたいと思っています。

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これ、メールで送ってもらって読んだので覚えてます。印刷したのも
おいてますよ、何回も読んだから、覚えてるフレーズがあったりして。懐かしい、すごく懐かしいです。
写真も。はじめてみたときのこととか、個展のとき見たときのこととか、そういうものまで付随して思い出します。

9年前ですか、うわあ・・・
[ 2006.02.15(Wed) 01:27] URL | marie-claire #Cu4OU15A | EDIT |

marie-claire様、
いつもコメント感謝です。ホント、ありがとうございます。いやはや、時の流れは早いものです。最近特にそう感じます。これは一体全体なぜなのでしょう・・・。個展で出した写真も今度まとめてブログに載せたいと思っています。
[ 2006.02.15(Wed) 20:26] URL | Kozo #- | EDIT |

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[ 2006.03.01(Wed) 19:48] URL | # | EDIT |

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プロフィール

高田耕造

Author:高田耕造

広島生まれの福岡育ち。高校は県立福岡高校。エスカレーター式に福高研修学園に進み浪人生活。その後、震災の年に神戸大学に入学。馬術部に入るも、馬の後ろ蹴りを受け、自分の鈍くささに嫌気がさすとともに馬に申し訳なく、退部する。部活をやめて、内なるエネルギーを学業に注ぐと思いきや、突然実家の福岡までチャリンコでGOー!3日間で福岡に到着。初日に5キロ以上体重が落ちたことに驚愕する。
体力もあり、爽やか青年のかっこいい旅物語のようにも想像されるが(されない?!)そうは問屋が卸さない。ゴール間近の3号線で「ビデオ・ランジェリー葉山」に気を取られ、その瞬間、ガードレールに激突。血だらけになりながら外れたチェーンを修理し、最後の帰路につく。
大学では神戸松蔭女子学院大学でフランス語をマダムたちと学んだ後、ボルドーへぶどう摘みに。このブログはその時の思い出から始まる。

在学中に結婚。はれてヒモとなる。奥さんに手作り弁当を手渡し、「いってらっしゃいまし」の日々。先日、ベリーズに住む友人とチャットをしていて「僕は妻と地球にパラサイト」っていったら素敵な表現だと褒めてくれた!「妻にパラサイト」が素敵?!
んなワケねーか・・・。サッカーのワールドカップ期間中、ベルギー国営放送のクルーたちとベルギーチームとともに日本を巡る。なんちゃってフランス語も時には役に立つ。先日の戦後60年に関するRTBFの取材は僕にとってもかなり勉強になった。
しかーし、リストラの波はヒモにもやってきた。ヒモ解雇。大学院を中退し、2004年から福岡で久留米絣の仕事に従事。
現在はまた神戸に戻ってきました!

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