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時折、本の角に三角の折り目を付けながら半分程を読み、残りは通勤電車の中での楽しみにとっておいた。
以前買っていた「態度が悪くてすみません」の一部と内容やノリが似てるなーって思っていたら今回の本のもとになった講演の時期と、「態度が〜」の該当する部分の執筆時期がほぼ同じ頃だった。2年近く前の講演がようやく実を結んだということのようだ。
以前から問題となっている学級崩壊がどのようなメカニズムで引き起こされているのかについて、初めて納得のいく説明を聞いた気分になった。その説明は内田氏のオリジナルではないとのことだが、冒頭に書かれているように、本書は先行研究に対するレビューの役割を明確に担っている点で全体像の俯瞰に役立つし、今後の読書案内としても活用できる。
本書の中でぐっと来た言葉は何カ所もあるのだけれど、今日はその中の一つを紹介しよう。
若い人がよく言う「クリエイティヴで、やりがいのある仕事」というのは、要するに、やっている当人に大きな達成感と満足感を与える仕事ということです。でも、「雪かき仕事」は、当人にどんな利益をもたらすかではなくて、周りの人たちのどんな不利益を抑止するかを基準になされるものです。
内容ももちろん味わい深く、以前「消防士は活躍しないことを目指しているんじゃないか」と書いたこととも通じるものがあり、好きなんだけど、それよりも話の展開に惹かれた。
内田氏の本にはこういった言い回しがしばしば出てくる(たぶん)。命題論理でいうところの逆、裏、対偶を意識せずとも自在という感じだ。僕はまだまだ血肉化出来ない。
ここで
「クリエイティヴで、やりがいのある仕事」ならば「当人に利益をもたらす」
という文を考えてみよう。「クリエイティヴ」「やりがいのある」「利益をもたらす」それぞれの定義が明瞭ではないので命題とは言えないけれども、仮に命題と同じように扱うと、上の文の対偶、逆、裏はそれぞれ次のようになる。
ちょっとその前に、簡単にまとめておくと、 p⇒q という命題(英語でpropositionって言うからpなんすね)があった場合、命題論理では以下のようになります。
逆:q⇒p
裏:?p⇒?q
対偶:?q⇒?p
注)?は否定(〜ではない)の意味です。
英語では逆をconverse、対偶をcontrapositiveといい、裏はconverse of contrapositiveと言うのですが、裏は対偶の逆ということですね。分かりやすく図にすると下記のようになります。

さて、先ほどの「クリエイティヴで、やりがいのある仕事」ならば「当人に利益をもたらす」に戻りますが、この文の逆、裏、対偶は上のまとめの通りにいくと以下のようになります。
逆:当人に利益をもたらすならば、クリエイティヴで、やりがいのある仕事である。
裏:クリエイティヴで、やりがいのある仕事でないならば、当人に利益をもたらさない。
対偶:当人に利益をもたらさないならば、クリエイティヴで、やりがいのある仕事ではない。
内田氏が述べる
「雪かき仕事」は、当人にどんな利益をもたらすかではなくて、周りの人たちのどんな不利益を抑止するかを基準になされるものです。
は、「クリエイティヴで、やりがいのある仕事」ならば「当人に利益をもたらす」の
裏をとって、
クリエイティヴで、やりがいのある仕事でないならば、当人に利益をもたらさない。
となるが、命題の否定をつくるやり方を文末に持ってくるのではなく、「当人」「利益」「もたらす」をそれぞれ否定していくと、「周囲の人」「不利益」「もたらさない」となり世界の新たな相を見い出すことが出来るのだ。
僕らは例えば、ある現象Aがあるとそのことばかりに注意を向けてしまうけれども、そこには非Aが存在する。現在問題としている事項以外に眼を向ける作法を身につけていればどれだけ世界が豊かになるだろう。
「他人の気持ちを考えろ」そう言われてもなかなかそうはいかないが、命題論理に於ける、逆・裏・対偶を技術として身につければそれだけ世界は複雑な表情を見せてくれることになるに違いない。
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